海の向こう側

海の向こうには町がある 町へ出るには橋も船もない 遠く陸伝いに辿るしかない 町へ行けば楽しいことがあるのだろうが 苦しみも悲しみもあり 辛いことがたくさん待っている もう町へ行かなくてもいいのなら どんなに気持ちは楽になることだろう ここにいれば 草を摘んで枯れては投げて そのうち…
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赤い電車で

休みの日の午後 赤い電車の出る駅へ行く その電車は町から岬の海辺まで 決まったレイルの上を ただひたすらに行っては帰るを繰り返す 見ているうちに電車は出てゆく 海まではトンネルを幾つも抜ける 町の緑は濃くなり 空は少しずつ澄んでゆく そして潮風が窓を揺らす 海岸の町へ辿り着くの…
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夕暮れの港

コンテナ埠頭が出来たばかりの頃 学校からの帰り道 未完成の埠頭に寄り道し 港がオレンジ色に染まるのを 町に帳が下りるまで眺めていた 赤い色だった橋は白く塗り変わり 倉庫の屋根が並んでいた岸壁も 高さのまちまちなビルが並ぶ 海辺の町に変わってしまった 貨物船も艀の姿も この入り江からは消えて…
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工場街の夕陽

工場の中を突き抜けて伸びる線路は 真っ直ぐに町まで続いている 町にはオイルと瓦斯と鉄くずの摩擦するような 目にしみる臭いが漂っていて 廃液が渦を巻くゴミの浮いた船溜まりからは 明日が今日でも昨日でも 何も変わらないという諦めにも似た 冷たい風が吹き込んでくる 俺の心は線路の煤けた砂利よりも…
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葦の干潟

大師河原の先に行けば 今は空気も澄んで青い空の広がる 県営の埋立地に辿り着く 少し昔の考えでは 浅い海など陸地に変えねば勿体ないと 当然のように海を無くしてきた 海は遠くなり 川のように狭くなった水辺 それでも砂や草がまだ生きていて 汚れた水も少しずつ浄化されてくると また穏やかな潮の…
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湿る稲

雨は朝から降り出し 昼の間止むことなく降り続け 夕刻には激しい降りとなった 町のところどころにある田圃の稲は 乾いては雨に濡れ また秋の風に吹かれて 米になっていくのだろう
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匂いに包まれた街

町の中を行くと どこにいても風に乗って 金木犀の香りが漂ってくる 花は可憐で儚いというが このどこまでも付いてくる初秋の香りは 逃れようのない過去の呪縛のように 脳の記憶の中枢に毒矢のごとく突き刺さる そしてそんな頭の重い時間も束の間 悪の呪文が記憶と共に消されるように 町から匂いは無くなっ…
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曼珠沙華の道

彼岸が過ぎて 涼しさに慣れてきた頃 今年は遅れて咲いた曼珠沙華も そろそろ終わりの頃となった 色褪せてゆく朱色の刹那に 朝日に輝く小道の花は 最後の色を輝かせていた
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ブルーな夕暮れ

昼間は夏のように暑くなったものの 朝晩の涼しさといえば 冬に近づくほどに日々冷えてゆく 川沿いの桜は少しずつ葉が色づき 黄色や赤になったものは 風に乗り川面に降りてゆく
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蒼い夜

夜の帰り道は 誰の顔を見るわけでもなく 見知らぬ人と目を合わさすよう 暗くてつまらない地面を見て ただ黙々と進むだけである 振り向いた町はただ青白く 二度とない過ぎてゆく夜に じっとしているだけだった
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萩の散る川

秋はどこからともなく漂いくる 花の淡い香りに誘われる 埠頭までの古い橋を渡るとき 石積みの岸壁に垂れて咲く 紫の小さな花に目が止まる 海に近い流れの止まった川は 少しの汐の匂いの中に 花の香りを乗せて 川面を揺らしている
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白い花

幼い頃 池の帰り道に立ち寄った 彼岸花の咲き誇る土手 初めて見る花の形と その一面の花の色を見て 思わず摘み取って 家に持って帰った …
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段葛の夜

獣が寄らぬよう 墓場に植えた毒花が 今は漫ろ歩く道端の どこにも生えて赤く咲く 昔に入った洋菓子屋の前を通るたび あのときあいつと買ったものは なんだったのだろうと 思い出してみても何もわからない 今再び店を訪れたとしても 当時の菓子があるものか あったとてそれがわかるものか わかったところ…
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永遠の別れ

永遠の別れは 突然にやってくる あの人と最後に会ったあの顔が 結局は最後に見た姿となり あのとき交わした何気ない日常の言葉が 今生の別れの台詞となる 別れの場面を思い返せば 想い出は後悔にも似た感情と 虚しいような仕方なさとが 変えられぬ過去として現れる いつかどこかで会えるだろうと …
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或る日のバス停

何も無くなってしまった町に 人も待たないバス停だけが 私の忘れかけた想い出のように 秋風に吹かれていた あの人はどこへ消えたのか あのとき暮らしていた部屋にあった 秒針がやたらに煩い壁掛け時計は いつどこで捨ててしまったのか 町は炎に包まれて 幸せを刻んだ物は焼け落ちて いつか灰は海の上に吹か…
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雨上がりの田圃

田圃の畦は草が生い茂り 僅かな獣道も覆い隠されている 記憶に残る道のあたりを 探りながら足を進める 稲刈りも終わったこの道を 今までに何度通ったことだろう そのたびに前の年 そのまた前の年の風景を 思い出してみては 気が滅入るように 今の空はどんよりと低い 雨もがった田圃の風は 湿…
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くれなゐの華

今までどこに咲く気配もなかったものが 彼岸になってみると 河原の彼方此方に赤い花があった 今年も咲いたのは彼岸花 夏草が刈られたあとも この花の根だけはどこかに残っていて いつの間にか茎は伸びて 知らぬ間に咲くのが毎年のことである
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曇りのコスモス

午後になって空は みるみるうちに雲に包まれた 雲は色濃く厚くなり 町は薄暗くなった どこまでも続くコスモスの道で 艶やかに澄んでいた花たちは グレーの空にくすんだ色になる 夕焼けの無い空から 少しだけ雨粒が降りてきた
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バスを待つとき

昨日より更に冷えた午後 夕方に近づくと それだけで肌寒いというのに 海からの風がまた強くなったようで 崖の上の木々の葉がざわざわと鳴り響き 町を包むように下りてくる 町の外れのどんつきは 桟橋を持つ中規模の工場と 古い公営住宅が並んでいて その中途半端な一角に バスの折返所がポツンと存在する …
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駅に向かう道

駅に続く道のイチョウ並木で 今年はじめて、ぎんなんの落ちているのに気がついた 秋分の日より肌寒く 明日は更に涼しくなるのか 夏の日は来年まで来ないのか 町は秋の香りを涼しげな風に乗せ 目の下に転がる秋の気配に ふと足を止めてから それを乗り越えまた次の秋を探し歩む
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祭りの町

排ガスで充満する国道から 旧街道へ折れて入ると のんびりとした佇まいに 祭りの提灯が夕風に揺れていた 遠くの雲には音も届かぬ稲光 どこか西だか、北の見も知らぬ町では 雷鳴に脅かされているのだろうか 明日はどこまで悪い空模様が来るのか 朝起きて雨音がしたならば どんなにか沈んだ気持ちになることだろ…
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空色のスカイウォーク

バスが辿り着いたのは 海の風がもろに吹きつける 遮るものが何もない岸壁だった 荒れ果てた防潮堤は 砂利の浮き出た古いコンクリート 朽ち果てた花壇の中には 帰化植物が伸び放題に伸び 枯れては伸びての繰り返しに 土は死んだように湿ったままだ 埠頭には幾艘もの外国船が停泊し 見知らぬ航路へ出…
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シルエットの街

防波堤の中に入れば 船は微かな揺れもなくなり 横浜の入江深くに進んでゆく 船が港に帰り着く頃 桟橋は夕日の影の中 薄暗いタラップを降りれば 波止場の風は夜風のように冷える
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埠頭の雲

秋の気配は、港の信号も 波の高さにも関係なく 体に感じる冷ややかさで 空の雲を見たくなったとき 秋は目の上に突如として現れる 埠頭に出るまでの距離で 背中にもこめかみにも 汗がにじむというのに 港の岸壁に立った途端 目下の波立つ水面ではなく 空の色に目をやったのは それが秋だということなのだ…
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コスモスの雲

見飽きたと思っていたものも 見られなくなれば寂しくなり 行きたくないと思った場所も いざ通り過ぎてしまうと 戻りたくなったりする 去年咲いた花は見られなかったが 今年のは見られるだろうか あの森へ上る細い獣道は 草に埋もれることもなく 今でも花畑へと続いているのだろうか
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土手の夕暮れ

土手の夏草がすべて刈られ 草の切口から発する青臭い臭気が 涼風に乗ってあたり一面に漂う 肌を撫でる夕暮れの風は すっかり秋のものになっていて 今年ももうこの季節がやってきたのかと 季節の変わり目に思うことが また頭をめぐってしまう
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雨上がり

雨の流れた後の道は 滑ることに注意を取られ 俯いたように歩んでしまう そんな姿は傍から見ると 幸せを逃してばかりいる とても不運な人間と 捉えられてしまうだろうか 私は何も考えていない 考えていないのに 何を考えているのかと 訊ねられたりしてしまう そこではじめて 自分がどれだけの外見…
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